エクアドルの教育制度

クエンカ大学 この国で生活をしていて様々な問題の根源は教育にあると感じている。エクアドルが何故途上国か考えるにあたって避ける事のできない教育制度について概要と問題点について述べてみたい。

<制度>
日本の小学校に当るのがエスクエラ(プリマリア)である。ここでは5歳から7年間勉強する。次はコレヒオ(セクンダリア)で6年間勉強する。ここは日本の中学校と高校に相当する。コレヒオでは最初の3年間(シクロ・バシコ)は全ての科目を勉強し次の3年間(シクロ・ディベルシフィカード)はコンピューター・会計など専科学習になる。6年間同じ学校で勉強する場合もあるが3年ずつ別の学校へ通う事もあるようだ。

国立職業訓練校最後に大学に相当するのがウニベルシダッド(スペリオール)である。学科によって卒業年数が異なり医学部は8年。法律学部は6年。経済学部と技術系学部は5年。他は3・4年で卒業できるそうだ。ここを卒業すると肩書き(Titulo)がもらえ就職先や給料に大きく影響を与える。他にもコレヒオ卒業後に日本の専門学校に相当するインスティトュートで2年間勉強する事もあるそうだ。

義務教育はプリマリアの7年間とコレヒオの最初の3年間の合計10年。日本の幼稚園に相当するハルディンデ インファンティル(Jardín de infantil)もある。学期は地方によって異なりシエラとオリエンテは9月15日から翌年の7月15日まで。コスタは4月15日から翌年の1月15日までである。また授業時間は日本より短く午前か午後の半チャンのみである。また日本と大きく違う所でプリマリアから留年があり同じ学年でも子供の年齢がバラバラなのが普通だそうだ。

<問題点>
まず、政府は公立学校に先生の給料しか払っていない。つまり設備維持費は各学校で賄わなければならない。そのため学校へ通うには月謝を払う必要がある。(年払いの所もある) また、教科書は自分で買わなければならない。その為、エクアドルでは一度も学校へ通わず働き始める子供が10-20%いると言われている。また、貧乏な家庭の子供はプリマリア中退やコレヒオに通わない事も多い。ちなみにエクアドルでは120万人の子供が働いていて10人に1人の子供が5歳で仕事を始めていると以前、新聞に書いてあった。

政府から払われるはずの給与の支払いも滞り気味で公立学校の教職員ストライキが頻繁に発生する。過去最長4ヶ月ストライキが続いたそうだ。私立学校ではほとんどストライキは無く金持ちは子供を私立学校へ入れる。私立学校は公立学校より費用が高く月謝も安くて50ドル、高いと200ドルを超える所もあるそうだ。

また、先生の質も問題でほとんど働いていないのに給料だけもらっている人も多い。そういう質の悪い先生でも法に守られていて簡単に首を切ることができない。また、教え方も子供に考えさせない教え方をしている事が多いそうだ。私のホームステイ先の父親はプリマリアの先生だが娘に宿題の質問を受けた時はまずヒントを出して考えさせろと思うのだが、こんなの簡単だと言って答を書いて終わり。これが一般的教育方法なんだって。

他にも教育制度に柔軟性があまり無く大学で情報処理を3年間勉強してテクノロゴの肩書きを取り卒業後、取得に5年間かかるインヘニエロ(Ingeniero)の肩書きを取ろうとする場合、再度ゼロから5年間勉強しないといけないそうだ。

<私見>
職業訓練等の高等教育を受ける前に基礎教育が無いと理解する事は難しい。講義の入学試験でいつも感じるがこの国の算数教育は全くなっていない。(日本で聞いた話では中南米は全般的に数学の能力が劣っていて大人でも日本の小学校高学年程度が平均らしい) 算数は日常の計算さえ出来れば十分という考えがあるが論理的な思考を育てるには良い手段である。算数の能力に比例してか私の生徒でも論理的に考える力が足りない者がほとんどだ。

また、礼儀についてもしっかりとした教育(しつけ)を受けておらずこちらが言葉を失う事でも平気でやる。礼儀は家庭でのしつけも大きいが学校の先生にだらしない人が多いのでは(遅刻するのが当たり前、生徒をほったらかして教室から出て行って戻ってこないなど)仕方の無い事なのかと残念に思う。

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